最近ニュースなどではしかや鳥インフルエンザなどの感染症が話題にのぼるとき、きまってマスコミに登場するのが国立感染症研究所の感染症情報センターのコメントです。ですからその名前だけは聞いた方が少なくないと思います。しかしこの国立感染症研究所はいったい何をどのように研究している施設でどこにあるのでしょうか?
国立感染症研究所のホームページを開いてみましょう。ホームページの「国立感染症研究所 概要」にはⅠ沿革、Ⅱ業務の概要、Ⅲ施設について記されています。
沿革については一九四七年に東京大学附属伝染病研究所の庁舎内に国立感染症研究所が設立されたこと、当初三部と庶務課で開始されたが一九五〇年代に厚生省組織規定により、その組織が十二研究部に拡大されたこと、一九五五年に品川区上大崎の旧海軍跡地に移転したことが記されています。この国立感染症研究所は、現在の新宿区戸山地区に移転した当初まで国立予防衛生研究所という名称でした。
さて現在の新宿区戸山地区に移転してきた経緯については、次のように記されています。
「国立予防衛生研究所のあり方に対する答申(一九八四)等に基づき、研究部門と品質管理部門(ワクチン、血液製剤)の分離等を考慮の上、組織の全面的見直しが行われ、一九九二年には品川庁舎から現在の新宿区戸山(戸山研究庁舎)に移転した」
ここには、立地条件などは全く考慮されないまま、新宿区戸山地区が、新しい庁舎の場所として選ばれたらしいことが伺えますが、これは驚くべきことと言わねばなりません。というのも感染研のホームページ自らが明らかにしているように、感染研の業務内容として危険度の高い病原体を用いた実験・研究が日常的に行われていることです。
感染研のホームページは自らの業務を次の四つに分類しています。
- 感染症に関わる基礎・応用研究
- 感染症のレファレンス業務
- 感染症のサーベイランス業務と感染症情報の収集・解析・提供
- 国家検定・検査業務と生物学的製剤、抗生物質等の品質管理に関する研究
- 国際協力関係業務
- 研修業務
これらの業務のうちで我々が関心を抱かざるを得ないのは①の研究業務です。たとえば感染研の組織はホームページによれば二四の部局に分かれていますが、その中の「ウイルス第一部」では、「エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミアコンゴ出血熱等のウイルス性出血熱の実験室診断法の開発及びウィルス学的研究」が行われています。ホームページには記されていませんが、これらの感染症がきわめて危険度の高いものであること、これらの研究が、これらの感染症の病原体を直接扱って行われていることを考えると、我々は現在の感染症研究所の立地条件を問題にせざるをえないのです。